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甲状腺とは?
甲状腺の役割
甲状腺は、のどぼとけの下にある臓器で、葉っぱのような形をしています。
甲状腺の役割は、新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの合成・分泌です。「元気のホルモン」と言うとわかりやすいかと思います。
このホルモンの分泌により、脳や筋肉などが活発に動くことができます。
甲状腺が病気になると・・・
甲状腺の病気には、ホルモン分泌の異常によるものと、甲状腺に腫瘍ができることにより起こるものがあります。
それぞれ原因が異なりますし、症状もさまざまですので、他の病気と間違える患者さまも多いです。
また、甲状腺が原因と分からなくても、人間ドックや検診での血液検査の異常値から、甲状腺ホルモン異常が見つかることもあります。
甲状腺ホルモン異常を疑う血液検査(人間ドックや検診で異常をいわれたら)
T-cho | (総コレステロール 脂質異常症疑い) |
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AST ALT ZTT TTT ALP |
(肝機能障害疑い) |
高血糖 尿糖 | (糖尿病疑い) |
CPK | (筋肉障害疑い) |
甲状腺ホルモンの異常
分泌が多すぎる (亢進症) |
新陳代謝が高くなりすぎ、体内の活動が必要以上に活発になります。 症状
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分泌が少なすぎる (機能低下症) |
新陳代謝が低くなりすぎ、体内の活動が必要以上に衰えます。 症状
疾患 |
甲状腺の腫瘍
甲状腺の腫れ・しこり (腫瘍) |
甲状腺に腫れ・しこりができ、手で触っても腫れているのがわかるようになります。 疾患 |
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甲状腺疾患の検査
甲状腺疾患を検査する方法には「超音波検査」と「細胞検査」があります。
超音波検査
体外から超音波を当てて、反射する音を画像処理することで、病変の有無や位置・大きさ・形などを調べる検査です。
放射線ではありませんので、被曝(被ばく)の心配はありません。
細胞診検査
甲状腺にしこりがあるときに、しこりが悪性かどうか調べる検査です。直接、甲状腺腫瘍に針を刺して、腫瘍細胞を採ります。(穿刺吸引細胞診)腫瘍細胞を採る検査です。
採血を行う細い針での穿刺です。そんなに痛みはありません。
血液検査について
ホルモン検査
TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 脳下垂体から分泌され、甲状腺機能のセンサーの役目をします。 |
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FT4(遊離サイロキシン) FT3(遊離トリヨードサイロニン) |
甲状腺から分泌され、人体内で、甲状腺ホルモンとして働きます。 |
抗体検査
TSHRAb(TSHレセプター抗体) | バセドウ病で高くなります。 |
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サイロイドテスト(抗サイログロブリン抗体) マイクロゾームテスト (抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体) |
慢性甲状腺炎、橋本病で高くなります。 |
サイログロブリン(腫瘍マーカー) | 甲状腺がんの術後やしこりが大きい時に測定します。 |
女性と甲状腺
甲状腺疾患は非常にありふれた疾患で、甲状腺の自覚がない一般患者の方でも甲状腺疾患が見つかる場合がございます。
特に女性に多い病気で、何か体調がすぐれないというときには、甲状腺ホルモン異常が潜んでいる可能性があります。
疲れやすい、やる気が出ない、便秘、肌荒れ、脱毛、微熱、ほてり、ドキドキするなどの症状で、年齢のせいと思い込んだり、うつ病や更年期障害と診断されることもあります。
甲状腺ホルモン異常は、体調不良やさまざまな症状を引き起こしますが、明らかな痛みや急性変化が出にくいので、生活に支障が出るほどでもなく、受診や検査を受けていないことが多いのです。
また自覚症状がなくても、人間ドックや健康診断で、コレステロール異常や肝機能障害や高血糖や筋肉障害の検査値の異常を指摘されていれば、甲状腺機能異常が疑われます。
症状や検査値異常があてはまる方は、一度甲状腺検査を受けてください。検査は簡単で、診察、血液検査、頸部超音波検査を行います。
また、甲状腺ホルモン異常は、妊娠出産に影響を及ぼします。不妊や流早産の原因になることがわかっており、しっかりとした対応が必要です。心あたりのある方は、医師にご相談ください。
外科領域の甲状腺疾患
甲状腺腫
甲状腺腫とは、甲状腺に腫瘍(腫れ・しこり)がある状態です。
腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に分けられます。良性腫瘍の場合は、がんの疑いがないこと、大きくなっていないこと、自覚症状がないこと、ホルモンに異常がないことを確認するため、定期的に経過を観察します。
がんの場合はしっかりとした診断を行い、腫瘍を切除しなければいけません。
【症状】
のどに腫れやしこりを感じます。また、腫瘍が大きくなると食べ物を飲み込む時につっかえるような感じがします。声がかれることもあります。自覚症状がなく健診などで指摘されることも多いです。
【治療法】
腫瘍が良性の場合の多くは治療の必要はありません。しこりが大きく、圧迫症状や見た目が気になるなどの症状がある場合は、手術を行うこともあります。
定期的に来院していただき、経過を観察していきます。
甲状腺がん
甲状腺がんとは、甲状腺にできる腫瘍のうち、悪性腫瘍を指します。
甲状腺がんは乳頭がん・濾胞がん・未分化がん・髄様がん・悪性リンパ腫に分けられます。
発がんのはっきりとした原因はわかっていませんが、チェルノブイリ原発事故の際、多くの人々が甲状腺がんにかかりました。そのため、放射能と甲状腺がんとの間には関連性があると考えられています。また遺伝性のものもあります。一般に甲状腺がんはたちの良いものが多いですが、しっかりとした診断と治療が大切です。
【症状】
のどに腫れやしこりを感じます。また、腫瘍が大きくなると食べ物を飲み込む時につっかえるような感じがします。声がかすれることもあります。首のぐりぐり(リンパ節)の腫れが出ることもあります。
【治療法】
多くの場合、甲状腺を摘出する手術を行います。甲状腺の切除範囲は、がんの種類や大きさなどにより決定されます。甲状腺を全部取り、その後、放射線ヨード治療や甲状腺ホルモン補充治療を行うこともあります。
当院では、甲状腺疾患に対するセカンドオピニオンも行っています。治療法や病気で質問や心配のある患者さまもぜひご相談ください。
内科領域の甲状腺疾患
バセドウ病
バセドウ病とは甲状腺機能亢進症の1つです。
バセドウ病は、自己免疫疾患(自分の体が自分の体の一部分に対して過剰反応を起こす病気)で、体が勝手に甲状腺刺激抗体を作り出します。
抗体が常に甲状腺を攻撃してしまうので、その刺激で常に甲状腺ホルモンを作り続け、新陳代謝が活発になります。
甲状腺は腫れていることが多いです。
【症状】
汗がたくさん出る、暑がる、やせる、食欲が増す、便の回数が増える
首の腫れ
動悸・脈が速くなる、脈がとぶ
手のふるえ、字が書きにくい、力が入りにくい
イライラする、眠れない
【治療法】
バセドウ病の治療法には、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬の服用(抗甲状腺剤治療)、甲状腺の細胞を減らす薬の服用(放射線内照射治療)、手術により甲状腺の一部を切除して、甲状腺の働きを弱める方法(外科手術)があります。
【薬】
抗甲状腺剤のメルカゾール、チウラジール、プロパジールを、症状の強さや副作用、妊娠、授乳などの患者さまの状態に合わせ使い分けます。
慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性甲状腺炎(橋本病)も、バセドウ病同様に自己免疫疾患の1つです。
慢性甲状腺炎の場合、甲状腺を攻撃する自己抗体により甲状腺を破壊していくため、甲状腺の機能が低下し、新陳代謝が滞ってしまいます。甲状腺はだんだん硬く、萎縮していくことが多いですが、硬く腫れたままのこともあります。
硬いしこりのような場合は、がんとの鑑別、急に大きくなるときは悪性リンパ腫の合併に注意を要します。
【症状】
- 寒がる、便秘、むくみ、脱毛、肌あれ、肌の乾燥
- 首の腫れ
- 脈が遅い
- 物忘れをする、眠気
- 無気力、脱力感
- うつ、ぼけ など
【治療法】
甲状腺の機能が低下しているため、甲状腺ホルモン剤を服用して、不足しているホルモンを補います。
甲状腺が大きくなりのどを圧迫している場合は、手術が必要な場合もあります。
【薬】
甲状腺ホルモン剤のチラーヂンS(合成甲状腺ホルモン)で、甲状腺ホルモン検査をしながら、自分に必要な量のホルモン量を補います。
潜在性甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモン(FT4)が正常であるが、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が上昇している状態。高齢者に多く、自覚症状がないため放置されていることが多いです。高脂血症を発症し、動脈硬化の進行が進むため、心筋梗塞や認知症のリスクが高まるといわれており、TSHが10μU/ml以上であれば、治療が必要です。
【症状】
なし(甲状腺ホルモン補充で、元気になったり、自覚症状に気が付いたりする。)
【治療法】
甲状腺ホルモン剤のチラーヂンS(合成甲状腺ホルモン)を少量内服し、TSHを正常化させます。